

目立たせる前に、決めること
タイトルの作り方に入る前に、決めておくことがあります。それは、「このタイトルが、本当に紙面の主役か」という一点です。主役が決まっていないまま大きくしても、他の要素と主役争いをして、結局どれも目立ちません。
目立ちは、そのもの単体では生まれません。周りより大きいから大きく見え、周りが静かだから目立つ。すべては、周りとの差から生まれます。つまり、タイトルを主役にすると決めたら、それ以外は脇役に回す覚悟が要ります。全部を目立たせようとすると、タイトルもまた埋もれます。まず、紙面でいちばん見せたい一つを、タイトルに定める。ここが出発点です。
たとえるなら、舞台の照明のようなものです。主役を目立たせるとき、主役だけを明るくするのではなく、周りを暗く落とします。周りが暗いから、同じ明るさでも主役が浮かび上がります。紙面も同じで、タイトルを立てるとは、周りを静かにすることでもあります。何を主役にするかを決める考え方は、情報の優先順位の決め方とそのままつながっています。 舞台照明の例が伝えるのは、主役だけでなく周囲との相対差が目立ちを作ることです。実際の紙面では、色、位置、読み上げ順など複数の手がかりを組み合わせます。
タイトルを立てる手順
主役がタイトルだと決まったら、立てていきます。大きくする以外の方法を、順に重ねます。
- まわりを、一段静かにする。 タイトル以外の文字や図を、少し小さく、少し薄くします。周りが下がると、タイトルは上げなくても際立ちます
- タイトルのまわりに、余白を取る。 上下左右に空間をあけると、そこに目が吸い寄せられます。囲む余白が、主役の座を作ります
- 置く位置を、閲覧順に合わせる。 横書きの一般的な紙面では上部を候補にし、実際の媒体で最初に目が届くか確認します
- 大きさの差を比べる。 固定倍率へ合わせず、最初にタイトルへ目が行く最小の差を実寸で探します
標準ルートでは、4の「大きくする」だけに頼らず、1から3を先に試します。まわりを静かにし、余白で囲み、閲覧順に合う位置へ置く。その版と元の版を実寸で比べ、まだ主役が判別しにくい場合に大きさを調整します。見出しと本文の大小の開き、ジャンプ率も、ほかの差と合わせて確認します。
よくあるつまずき、大きくするだけ
タイトルが目立たないとき、いちばんやりがちなのが、「とにかく大きくする」ことです。でも、これだけでは、うまくいかないことが多くあります。
周りもにぎやかなままタイトルだけ大きくすると、大きな要素どうしがぶつかって、どれが主役か分からなくなります。5つの要素が全部大きければ、大きいことが当たり前になり、差は消えます。同じように、目立たせようと色を足したり、飾りをつけたりするのも、周りとの差ではなく、要素そのものを増やす方向なので、かえってごちゃつきます。のっぺりして見える紙面を直すときと同じで、足すより、差をつけるほうが効きます。この差の作り方は、メリハリのないデザインはなぜでくわしく扱っています。
つまずきを抜けるコツは、上げるより下げる、と覚えることです。タイトルを上げて目立たせようとする前に、周りを下げてみる。周りが静かになれば、タイトルは同じ大きさのまま主役になります。目立たせたいものが埋もれたら、そのものを大きくするより、周りを小さく静かにする。この逆の発想が、つまずきを解きます。
もうひとつ、よくあるつまずきに、タイトルを複数作ってしまうことがあります。あれも見せたい、これも見せたいと、大きな見出しをいくつも並べると、主役が分散して、どれも立たなくなります。主役は一つ。それ以外を副題や小見出しに落とすと、いちばん見せたい一つが、はっきり浮かび上がります。見せたいものが多いときほど、順位をつけて、一番だけをタイトルに残す勇気が要ります。
仕上げに、確認すること
立て終わったら、公開の前に確認します。次の点を、一つずつ見てください。
- いちばん最初に、タイトルに目が行くか。 少し離れて紙面全体を見て確かめます
- タイトルのまわりに、余白があるか。 他の要素が近づきすぎていないか
- 周りの要素は、タイトルより静かか。 主役より目立つ脇役がいないか
- タイトルは、閲覧順の入口にあるか。 媒体・言語・構図に合う位置か
- 色や飾りで、目立たせようとしていないか。 差と余白で立っているか
- タイトルの言葉は、短くまとまっているか。 長すぎると、大きくしても読まれません
この確認で、一つでも引っかかったら、そこを直します。とくに多いのは、周りの要素がまだにぎやかで、主役争いが起きている場合です。視線がどこに導かれるか、その流れである視線誘導を意識して、タイトルから読み始められるかを確かめてください。
周りを静かにして、立ててみる
今日のワーク:上げずに、下げる
タイトルが目立たない紙面を1つ選んで、タイトルは変えずに、まわりの要素だけを一段静かにしてみてください。少し小さく、少し薄くします。
- 周りを静かにした版と、元の版を並べます
- タイトルに、先に目が行くようになったかを確かめます
タイトルを大きくしていない版でも主役に見えるかを確かめます。変化がなければ、余白、位置、大きさの別案へ進みます。
この作業は、目立たせたいものだけでなく、周りとの関係を見る練習です。主役を上げる前に、脇役を下げた版も候補にすると、変更する要素を増やしすぎず比較できます。
比較するときは、見る距離と表示時間をそろえます。スマホ、印刷物、屋外掲示では条件が違うため、別の媒体で得た結論をそのまま移しません。想定する相手に近い人へ2案を順番を変えて見せ、最初に見えたものを聞きます。
周りを静かにしてもまだ弱ければ、そこで余白と大きさを試します。標準ルートは、下げる・囲む・上げる、の順です。安全表示、複数の必須見出し、縦書きや特殊な構図では別の順番が合う場合があります。変更前後を実寸で見て、タイトルから読み始められるかを判断してください。
タイトルは、大きさより差で立つ
タイトルを目立たせるときは、大きさだけでなく、まわりの強さ、余白、閲覧順に合う位置を比べます。タイトルを変えない版と、まわりを控えた版を作れば、どの差が主役の判別に効いたかを確認できます。上げる前に下げる案も持ち、実際の媒体で最初に目へ入るものを確かめてください。
タイトルを立てられるようになったら、次は紙面全体でメリハリをつける力に進むと、主役がさらに際立ちます。次に読むなら、メリハリのないデザインはなぜで、差のつけ方を続けて確かめてみてください。
