

なぜ、全部大事に見えるのか
自分で用意した情報は、どれも理由があって載せているので、作り手にはすべてが大事に見えます。これは当然のことで、悪いことではありません。問題は、その「全部大事」をそのまま紙面に持ち込むと、読む人にも全部を同じ強さで差し出してしまうことです。
すべてが同じ大きさ・同じ強さで並んだ紙面は、受け取る人にとって「どこから見ればいいか分からない紙面」になります。作り手の「全部大事」は、読み手には「どれも大事そうに見えない」に反転してしまうのです。
たとえるなら、駅のアナウンスのようなものです。すべての案内が同じ大きさの声で同時に流れたら、いちばん急ぎの情報も聞き取れません。大事な案内ほど、ほかを一度静かにして、はっきり伝える必要があります。紙面も同じで、1番を届けるには、ほかを少し引く必要があります。 駅の案内の比喩が示すのは、情報を同時に強くすると急ぐべき内容が埋もれることです。実際の順番は、利用者の目的、安全性、法的な表示義務も含めて決めます。
もうひとつ、「全部大事」には落とし穴があります。順番を決めないでいると、その判断を、読む人に丸投げすることになるのです。作り手が「どれが一番大事か」を決めなければ、読む人が自分で探すしかありません。でも、わざわざ探してくれる人は多くありません。順番を決めるのは、読む人の手間を、作り手が代わりに引き受ける作業でもあります。決めるのは大変ですが、その大変さを引き受けた紙面ほど、すっと伝わります。
身近にある、優先順位の例
優先順位は、大きさ、位置、余白などの差として見せられます。身近な例を、固定の正解ではなく役割の違いとして見てみます。
- 求人チラシは、まず「募集」の一言と時給が大きく、仕事内容は次に、応募方法は最後に小さく
- 商品パッケージは、商品名がいちばん大きく、特長が次に、原材料は裏に小さく
- 案内はがきは、日時と場所が主役で、あいさつ文は控えめに
どれも、情報を消しているわけではありません。すべて載せたうえで、大きさと位置で順番をつけているだけです。この順番が、読む人の目を迷わせずに運びます。目を運ぶ設計は視線誘導、順番を強さの差で見せる考え方はコントラストとして整理できます。実際、読みやすい紙面ほど、この2つが丁寧に効いています。裏を返せば、順番を決めさえすれば、この2つの道具が自然と使えるようになるということです。
自分の紙面で、1番を決める
では、自分の紙面で順番をどう決めるか。次の手順が使えます。
- 載せる情報を、すべて書き出す。 頭の中ではなく、紙かメモに一度出します
- 「これが伝わらなかったら失敗」という1番を、1つだけ選ぶ。 2つ選びたくなっても、心を鬼にして1つに絞ります
- 残りを2番・3番に分ける。 2番は「1番の次に見てほしいもの」、3番は「あればよいもの」です
- 番号どおりに、大きさと位置をつける。 1番をいちばん大きく目立つ場所へ、3番は小さく端へ
この手順の心臓は、2つ目の「1番を1つだけ」です。1番が決まると、ほかの要素は自動的に「1番より控えめにする」という基準ができ、大きさや色の判断で迷わなくなります。1番を目立たせるいちばん確実な方法は、そのものを強くすることより、まわりを控えめにすることです。
書き出す作業を、頭の中ですませないことも大切です。頭の中では、情報はどれも同じくらいの重さに感じられ、順番がつけられません。紙やメモに一度出すと、はじめて「これは3でいいな」「これは要らないかも」と、外側から眺められるようになります。作り手の目線から、読み手の目線に切り替えるための、いちばん簡単な方法が、この書き出しです。手を動かして外に出す。それだけで、優先順位はぐっとつけやすくなります。
優先順位が効かない場合
順番をつけたのに整わないときもあります。そうした型を知っておくと、直しが早くなります。
ひとつは、1番を欲張って2つ3つ作ってしまう場合です。「これも1番、あれも1番」となった瞬間、順番は崩れ、また全部が同じ強さに戻ります。1番は、1つに絞ります。
もうひとつは、順番はついているのに、差が小さすぎる場合です。1番と2番の大きさがほとんど同じだと、順番はあってないようなものになります。順番をつけたら、その差ははっきりつけます。情報が多くて紙面が詰まってしまう場合は、順番づけの前に、チラシが詰まって見える原因の整理が先に効くこともあります。
差をつけると、2番や3番が「見えなくなるのでは」と不安になることがあります。そこで、遠くから主役を見つけられるか、実際に読む距離では補足も読めるかを別々に確認します。小さくした文字が読めないなら、さらに小さくせず、位置・太さ・余白・情報量で差を作ります。目的の閲覧距離で両方を満たすことが、優先順位の条件です。
番号を振って、試す
今日のワーク:1・2・3を振る
作りかけの紙面(またはこれから作るもの)に載る情報を、ぜんぶ紙に並べてみましょう。並べたら、ひとつずつに1〜3の番号を振っていきます。
- 1は「伝わらなかったら失敗」の情報。1つだけ選びます
- 2は「次に見てほしい」情報、3は「あればよい」情報
番号を振ってみると、じつは3が多かった、1が2つあった、といった発見があります。その発見こそが、紙面を整える出発点です。
番号は、あとで変えても大丈夫です。大事なのは、頭の中の「全部大事」を、一度目に見える序列にすることです。序列がいったん見えれば、そこから紙面を組み立てるのは、驚くほど楽になります。何を大きくするか、どこに置くか、どの色を効かせるか。そのすべての判断が、この番号を土台に決まっていくからです。
優先順位は、引き算で決まる
情報の優先順位は、何かを足して決まるのではなく、1番を選んで残りを控えめにする、引き算で立ち上がります。全部大事に見えるのは順番を決めていないからで、1番を1つに絞れば、大きさも色も配置も、判断がぐっと楽になります。
「全部大事だから削れない」と感じたら、まず削除を決めず、1番を1つ選んで残りを控えめにします。それでも主役が伝わらない、または必要な大きさで読めない場合は、ページを分けるか情報を減らします。順番づけは万能な収納術ではなく、残せる情報量を見極めるための最初の診断です。次に進むなら、ファーストビューに何を置くかで、最初の画面に残す内容を確かめてみてください。
